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Gotta be everything more
2012年5月21日月曜日
2012年5月5日土曜日
【五輪代表】 OA込みで選出する五輪代表試案。
本題に入る前に言っておきたいのが、私の試案では大幅に予選メンバーとは入れ替わりを見せますが、そこに関しては何ら危惧する所はありません。といっても、それは不幸中の幸いといったところで、要するに現行のメンバーは仲良し度とかはともかく、戦略的ノウハウの共有量の蓄積はほぼ皆無に等しいのであり、そこに戦術理解の高い選手が入れば、新たに規律を作りだせるからです。この辺に関しては、武藤文雄氏は「インテリジェンス皆無のサッカー」とまで形容していますが、だからこそ共有されたインテリジェンスが皆無に等しい分、新しい選手でもスッと入れるはず、ということです。
さて本題に入ると、まずはじめに大きなポイントは、オーバーエイジに誰を使うか、という以前にそもそもその枠を使うのか?という所だと思います。断言しますが、私は使用推奨派です。OA無しで臨んで玉砕した後に数多くの選手が欧州へと羽ばたきフル代表の中核を占める2008年北京五輪関塚ジャパンのことを思えば、確かに不使用派の意見も一理あるな、という感じですし、逆にシドニー五輪で躍進したいわゆる"黄金世代"が(日韓はさておき)ドイツであのザマだとすれば、更に積極性を増してくるかと思います。だけれど、挫折の経験であれ、躍進の経験であれ、結局はそれを糧にするかどうかは個人次第だと思いますし、何よりも結局その後のフル代表が躍進するかいなかはハッキリ言うと監督次第、もっというと戦術次第です。たとえば北京での挫折を知ったメンバーが中心の南アフリカW杯でも、(今の五輪代表のように)戦術的にノープランで戦っていたら玉砕していた所でしょう。その程度のものとしか私は考えていません。くわえて、OAの選手にフル代表の中心級を呼ぶことで、いったい何がどう違うか、ピッチ上で肌に感じることが出来ます。これが僕は非常に大きいと思う。
さて、では、前置きこそ長くなりましたが、じゃあ誰を選ぶか?ということになってきます。基本的には定石通り、センターラインにガッツリとフル代表の中心選手を並べるのがいいと思う。まず遠藤保仁。最近はJのプレーを見ていても精細を欠く感は否めないけれど、それでもやっぱり、山村和也はいうまでもなく、山口螢や扇原貴宏には無い熟練の駆け引きが出来る。もしどうしても遠藤の調子が上がってこないようなら、私なら柏レイソルの茨田陽生(ばらた・あきみ・20歳)や柴崎岳を呼んで、バランサー的ボランチのオプションを沢山持ちたい。というのも、どう考えても現行U-23は個人技頼みすぎる所があるからです。で、次にFWは前田遼一。私はこのブログにおいて再三再四彼を大絶賛していますが、これといったセンターフォワードがいない五輪代表では間違いなく重宝します。競ってよし、走りまわってよし、打ってよし、収めてよしの彼のプレーを間近で見ることで、特に大迫勇也などは発奮するものがあるのではないでしょうか。最後にセンターバックにも一人。これがかなり難しい。まず今野泰幸ですが、彼も遠藤同様にあまり状態が上がってこない。次に吉田麻也。これは結構現実的なラインで、年代的にはちょうどスペインのフアン・マタ等と同じで、23歳なんだけれども五輪にはギリギリ出れないラインで、年代的な親和性がある。今までのフル代表の最年少グループとしてではなく、今度は年長組としての発奮も期待できる。ただ、彼らを差し置いて、ガチで勝ちに行くためのチーム作りを優先するならば、僕なら田中マルクス闘莉王を呼ぶ。CBとしての能力も高く計算できるし、フィードも上手い。でもそれ以上に、一番デカい声を出しそう笑。誰かが喝を入れなければならない苦しい場面で、しっかり叱咤できる。プレーだけではなく、精神的にもファイトする姿勢を見せられるから、精神的支柱不足感のいなめないU-23ではすごくいい刺激になる。
ということで、OAの話が長くなりましたが、色々含めて私がU-23代表の19人を選出するなら以下になります。
■FW
- 前田遼一 (ジュビロ磐田)
- 大迫勇也 (鹿島アントラーズ)
- 永井謙佑 (名古屋グランパス)
■MF
- 遠藤保仁 (ガンバ大阪)
- 香川真司 (ボルシア・ドルトムント/独)
- 宮市亮 (ボルトン・ワンダラーズ/英)
- 大津祐樹 (ボルシアMG/独)
- 東慶悟 (アルビレックス新潟)
- 清武弘嗣 (セレッソ大阪)
- 山口螢 (セレッソ大阪)
- 扇原貴宏 (セレッソ大阪)
■DF
- 田中マルクス闘莉王(名古屋グランパスエイト)
- 酒井宏樹 (柏レイソル)
- 酒井高徳 (VfBシュツットガルト/独)
- 吉田豊 (清水エスパルス)
- 濱田水輝 (浦和レッドダイヤモンズ)
- 鈴木大輔 (アルビレックス新潟)
■GK
- 権田修一 (FC東京)
- 増田卓也 (サンフレッチェ広島)
以上が私の選ぶ19人になります。かなり悩んだのが、ユトレヒト/蘭で活躍する高木善朗。パパは現横浜DeNAベイスターズコーチ、兄弟はみなプロサッカー選手の彼。正直言うと、東慶悟の上位互換のような気もしなくはないのですが・・・。まあ彼にはもう4年後もありますし、そちらに期待ということで。あと改めて驚かされるのは、吉田麻也もそうですが、88年4月~89年3月組の人材の豊富さですね。麻也にくわえて、山田大記(ジュビロ磐田)、太田宏介(FC東京)、あと森本貴幸(ノヴァーラ/伊)なんかもそうで、スペインU-23のように年代的に近いということでこの一つ上の学年をOAとして加えたチームを作ってもかなり面白そうではあります。さて、それはさておき、上記のメンバーを実際に並べてみると次のようになります。
全体的に2010-2011のボルシア・ドルトムントに近い戦い方になるかと思います。前線で体を張ってボールを収めるルーカス・バリオスの仕事を前田が、ボールを的確に配給しゲームを作るのが遠藤。香川は去年の香川で、ビルドアップのために低い所からスタートするよりは、常に危険な動きを見せるシャドーのような働きで。更に両SBとCBにビルドアップ能力の高い選手を置いて、どこからでも攻撃を始められる陣形に。ただちょっと怖いのが、宮市を先発にすると裏のスペースをオーバーラップしてくるサイドバックと奪い合う形になることで、両SB共に攻撃参加意志の高い選手をおいてるのでそこだけ余計に怖いです。もしかすると、先発を宮市にするよりは、東や大津のほうがいいのかもしれない。そして後半の両SHに宮市と永井を投入してバンバン走らせるような形。
さて、いかがでしょう?私はこれが今持っている中での正着手だと思うのですが。ご意見などありましたら、どうぞお気軽にお願いいたします。
2012年3月5日月曜日
【A代表】ザックジャパン最悪の試合 日本-ウズベキスタン
日本 0-1 ウズベキスタン
ホームで迎えた3次予選最終戦。既に最終予選進出は決定しているものの、くじびきなどを考慮しても負けてはいられない1戦に、多忙を極める海外組を揃えたザックジャパン。ホームで迎え打つはアウェーで苦戦したウズベキスタン。リベンジを果たすには絶好の機会だが・・・?
2012年1月9日月曜日
【ユース年代】 高校サッカー決勝 市立船橋-四日市中央工業
市立船橋 |
| 四日市中央工 |
結論から申し上げるならば、正直な話、四中工は勝てた試合だったと思います。市船が強かったというよりは、四中工のゲームプランの無さのせいで負けたような試合だったのではないかと。もちろん、両監督とも、決勝まで残る素晴らしいチームを創り上げたのは敬意を払われてしかるべきだと思いますし、おそらく彼らでなければ決勝に残るチームを創り上げることは不可能だったでしょう。しかし、四中工の監督は「決勝に残れるチーム」は作れても「決勝で勝てるチーム」は作れなかった、それに尽きるかと思います(一介のブロガーにここまで言われるのも癪だとは思いますが・・・)。といっても、四中工サイドの采配ばかりが疑問だったかというとそうでもなく、むしろ市船の采配こそ狙いが読めないもので、立ち上がりに先制してしばらく経ってから「これは普通にやってれば四中工の勝ちだ」と確信したものでした。
さて、決勝の舞台まで残るチーム同士ですから、当然ながら選手個々の能力は高く、ボールをもって仕掛けていく時の迫力は両チームとも素晴らしいものがありました。ただ、はじまってみれば、当初は市船のゲームプランのほうが、はっきり言うと最初から不明瞭だったように思います。4-3-3という、サイドを広く使い縦方向にコンパクトにキープして戦うべきフォーメーションを採用していながら、CFの大きな選手に向かって蹴り出す放り込みサッカーを行うという、一般的なセオリーからすれば疑問符の残る攻撃展開を中心に行い、当然ながら全く機能しない。CFの大きな選手に当ててそこからセカンドボールを拾って攻撃を展開するのならば、2トップにして電柱役1人、衛星、もしくはシャドー役1人とするのが定石で、CFが中央で構え、両サイドウィングが有機的に絡むことを想定した3トップで狙うべき戦術ではない。しかもCFの長身9番は競り合い自体は下手ではないけれどヘディングの技術もしくは意識が極端に低く、くわえてサイドに流れてボールを受けたがるというミスマッチな性質を見せていました。頑張ってロングボールをCFに当てても、3FWの残り二枚はサイドに開いていますし、押し込まれ気味の中では3MFも高い位置を維持できない。結果としてセカンドボールがことごとく四中工に渡ります。また、市船の9番とマッチアップしていた四中工CBの危機察知能力が非常に高いことも市船にとっては不利に作用していました。こういった理由から、はっきり言うと市船の攻撃はチグハグで、たとえ四中工の開幕ゴールがラッキーパンチだったとしても、追加点が入るのは時間の問題だと思ったのですが・・・。
しかし、サッカーというのは、早めの先制点というのは中々ポジティブに作用するばかりのものではありません。早く先制点を取らないと追いつかれて苦しくなる、そのまま勢いにのった相手に置いてけぼりにされる恐れがある・・・etc。試合が始まって間もなくから残り時間を意識しながら戦わなければならないというのは、非常に苦しいものです。当然、ピッチ上でゲームプランを練りながら攻撃や守備に緩急を付けられる老獪なボランチなどもいませんから、ピッチ上の四中工の選手達としては「早く追加点を決めて突き放しにかかる」という所に向かっていくことになります。幸い、前述の通り市船の攻撃はチグハグですから、一生懸命跳ね返してさえいればいい。ただ、攻撃プランの迷走っぷりとは対照的に、市船はディフェンスは割と組織立っていて、ボールを奪われるとすぐにプレッシャーを寄せてくる。四中工としては、プレッシャーの弱いサイドに逃げつつ、8番と18番という個人突破力の秀でた選手が上手く縦に抜けて幾度と無くチャンスメイクしていきますが、なかなか中央のバイタルには侵入できない。ただし、攻めている間は失点する恐れも少ない。先制点のおかげで、さして攻撃に人数をかけず、市船の縦ポンに備えながらも鋭い攻撃を見せながら前半終了。今思えば、ここが一つのターニングポイントだったのかもしれません。すなわち、リスクを背負ってでも前がかりになって追加点を狙いにいくべきだった。
采配によって"仕掛け"るのが上手い監督、ヘタな監督というのが当然ながらいますが、名将と呼ばれる人たちはやはり上手く采配できるというのは必須条件のように思えます。後半は、時間が経過するにつれてスコアがどう変動していくかにもよりますが、基本的に両チームのパワーバランスに大きな変動(怪我やレッドカードによる退場者など)が起きないと予想される以上、膠着状態に近いゲームを決めるのは監督の采配だろうと思って見ていました。特にセンシティブな采配が要求されるのは状況的には四中工のほうで、早い段階での先制点のせいで逆に時間の経過が遅く感じられるなかで、セカンドボール拾いに奔走しオーバーラン気味の中盤をどうやってケアしていくか、という点が見物でした。特に、累積警告で出場できないキャプテンにかわって出ていたボランチの選手の献身ぷりは目を見張るものがある一方で、彼を中心に中盤がバテかけた時に素早くカードを切れるか、という点がこの試合の行方を占う一つの鍵だとハーフタイム中に私は考えていました。要するに、四中工にしても市船にしても選手は実力以上のパフォーマンスを見せ続けていたわけです。そうなってくると、試合を決めるのは、当然ながら、采配、ということになります。
両チームとも選手変更なしで後半スタート。立ち上がり、縦ポンを減らし繋ぐ意識の増えた市船の攻撃のテンポが徐々に良くなっていきます。ハーフタイムにそういった指示があったのでしょうか、だとすれば、あの前半の中盤省略サッカーはピッチ上の選手の独断というわけになりますが、真相はわかりません。4-3-3はサイドをワイドに使いつつ、縦に圧縮したサッカーで、両SBのオーバーラップを含めた緊密な距離感を維持しつつポゼッションしながら全体が前に推進して攻めていくサッカーですので、フォーメーション的にはこれで良いわけです。しかし、四中工もこれを根気強く跳ね返す。特に前半から獅子奮迅の活躍であるCB3番を中心に、何度攻めこまれても跳ね返し、自慢の両SHにボールを繋いで鋭い逆襲を仕掛けていきます。
そうやって一進一退でスコアの変動の無いまま、徐々に痺れを切らした市船は、焦りからかまた中盤を省略してロングボールを多用する戦術に移行していきます。これが前半と違ってこたえるのは、四中工の中盤も徐々に摩耗しはじめているからで、徐々にセカンドボールを市船が拾うようになり、4-3-3で放り込みサッカーという謎のスタイルが機能しはじめます。ただ、戦術的には前半と一緒ですから、対策も前半と一緒で、よく走るダイナモを中盤やディフェンスに投入して後ろのほうのディフェンスを再活性化するだけで市船の放り込みサッカーを無効化できるわけですが・・・なぜかそれをする気配がまるでない。対照的に市船はウィングにスピードのある選手も投入。だいたい後半30分ぐらいから四中工の足が止まり始め、それを好機だと捉えた市船はどんどんロングボールを後ろから投入し続け、セカンドボールを拾い、足の速い両ウイングに繋ぐ、まさに死人に鞭打つような攻撃を展開。それでも本当に「気力」だけで跳ね返し続けていた四中工ディフェンスですが、徐々に跳ね返すラインは後退し、遂には何本も連続でコーナーキックに逃げるしかなくなってくる。そこで後半46分の同点ゴール。アディショナルタイムが2分の中で、1分まで耐えた選手たちはむしろ良くやったと思います。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは野球の野村監督の言葉ですが、まさにその言葉の通りだと思って見ていました。試合はこのまま延長戦に入るわけですが、監督がとんでもないモチベーターで、選手全員が復活する一言を掛けるか、もしくはアントラーズ・本山雅志のような切り札でも残していない限り、四中工に勝ちはないと確信した瞬間でした。それでもここまで来たのだからと、息を吹き返したように、ネジを巻きなおして延長前半を戦い抜いた四中工ですが、さすがに延長後半6分には勝ち越し点を決められてしまいます。最後決めたのは市船の10番ですが、ペナルティエリア内ですら四中工の選手は足が止まって追いつけずにマークに手がまわり切らず、まるで振り回されるように、蹂躙されるかのように、上手く入れ替わって撹乱していく市船攻撃陣に遊ばれていたかのようでした。
私がここまで言うのは、一人の視聴者として見ていた時に、四中工の選手たちが本当に不憫でならなかったからです。なぜ前半から獅子奮迅の働きで相手の攻撃を跳ね返し続けてきたディフェンス陣にテコ入れをしてやらなかったのかと。なぜ止まった足を更に動かす選択をしたのかと。選手たちは監督に感謝している、と述べるでしょう。勝負師は、勝負の重圧を全身に感じるその場にいない者からとやかく言われる理不尽さがあり、その孤独が辛いと嘆くでしょう。私だって、その孤独がまるで想像できないわけではありません。しかし、それでも、あのゲームプランは、ピッチ上で動けなくなるまで走っている選手たちにとって、あまりにも、あんまりだったと、そう言わざるを得ないように思います。
最後に。「高校サッカーはレベルが低い」「所詮部活レベルでJユースとは格が違う」という話は、僕もあまり的を射ているとは思いません。現に、本田圭佑や、長友佑都のような、部活上がりの選手が世界に羽ばたいている現状を見るかぎり、部活サッカーとJユース育成は互いに補いながら日本サッカーの人材レベルの向上に寄与していると思います。ただ、その一方で、日本の指導者サイドの戦術意識の低さが指摘され続けているのは、やはり看過されるべきではないと再認識するに至りました。戦術やゲームプラン次第で、選手達の苦労が100倍にも100分の1倍にもなるのだということは、もう少し認識されてもいいのではないのでしょうか。たかがブロガーにここまで言われるのは、現にサッカーの最前線におられる方にとっては不愉快かもしれませんが、そんな事を、あまりにも妥当性を欠いた試合運びで両チームが「譲り合い」をする決勝戦を見て強く思った試合でした。
2011年12月10日土曜日
【書籍】 『ザックJAPANはスペインを倒せるか?』
posted with amazlink at 11.12.10
- 序章 -前書きにかえて-
- 予兆 -就任1年で見えた"名将"ザッケローニ監督の優れたマネージメント力-
- 格闘 -2014年ブラジルW杯予選までのザックJAPAN考察-
- 勇戦 -ザックJAPANはスペインを倒せるか-
就任以来16戦連続で黒星無しという偉大な記録を打ち立てたサッカー日本代表。これまでにもザッケローニの生い立ちや、彼の就任以後の日本代表の歩みについての書物や特集は数多くありましたが、それらの最新版、すなわち北朝鮮に敗れはしたものの、アジア3次予選突破を決めた段階でのザックジャパンの総まとめという印象が強いと言えます。
すなわち、タイトルとなっている「ザックJAPANはスペインを倒せるか」という内容については、少し肩透かしを食らった感は否めなかった、ということでもあります。私が読者として期待していたのは、日本がスペイン代表に劣るのは当然であるから、たとえばどのような点をどういう風に強化すればよいのか、という点についての理論的かつ実践的な考察だったのですが、その点に関しては「結局のところ、フットボールの女神が偶然にも微笑みかけてくれさえすれば勝てるかもしれない」というレベルの希望しか述べられていない(それもそのはず、なぜなら今、異次元の強さを誇るスペイン代表よりも強いチームなどは存在しないのだから)点については不満が残ります。
『スペイン代表に日本代表が勝つには』という風にも読めるセンセーショナルなタイトリングを行うことで、マーケティング的な成功は実現しているものの、日本代表、ひいては日本サッカーへの何かしらの提言書としてはタイトルから期待される及第点には至っていないのではないか、というのが一冊の新書としての私の感想です。
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小宮氏が再三述べているのは、日本代表のCBラインの弱さです。今野泰幸-吉田麻也がザックの就任以後はその座を射止めてはいますが、確かに守備面の不安は大いに残っているのは私も感じております。ただ、小宮氏は吉田についてはほぼ言及しておらず、それに対して、南アフリカW杯で正CBだった田中マルクス闘莉王については絶賛しており、しきりに彼の必要性を説きます。確かに、"単純に勝ちに行く"だけならば、彼のような完成されたCBは必要不可欠です。私自身の評価としては、闘莉王から対人守備の強さ、機を見たオーバーラップ、そして守備陣だけではなくチーム全体を引き締めるキャプテンシーを取り除けば吉田になると感じていて、逆を返せば、吉田麻也が闘莉王と比肩できる側面があるとすればビルドアップのセンス、視野の広さぐらいじゃないかなー、とは常々思っています。
このブログでは私はこれまで一貫して吉田麻也に対して一定の評価を与えてきましたが、逆に闘莉王のことについてはあまり触れてきませんでした。なぜなら、彼は先述のように「完成されたCB」なのです。彼であれば、今すぐに欧州トップリーグに渡ったとしても遜色ないプレーが出来るとすら私は思っていますし、それはザッケローニ自身も述べていることではあります。しかし、だからこそ「なぜ吉田麻也をザックは重用するのか」という点についての配慮が小宮氏にももう少し必要だったのではないでしょうか。これまでも述べてきたように、バルセロナのCB、プジョルとピケのコンビを、ザックは対人に強く危機管理に長けた今野、足元の技術に優れ高さのある吉田というコンビで模倣しているのだと私は思っています。確かに主に守備力の面でバルサのコンビよりは頼りないですが・・・。しかし、ザッケローニが当時のガンバ監督西野氏に向かって「あなたはこのようなチームを引き入れて光栄でしょう」と手放しで絶賛し、そして何度も視察に訪れるなどして、ガンバ大阪というチームを高く評価している点では、「守り切るサッカー」よりは西野朗が夢見る「クライフサッカー」、すなわち「4点取られても5点取って勝つサッカー」に対する憧れが散見されるようにも思われます。采配の面では、それとは裏腹に、CBのオーバーラップを禁止する等のイタリア人らしい守備的なものも目立ちますが、それは彼なりの葛藤の表れということなのではないでしょうか。
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と、ここまで全般的に批判的なスタンスで本書に対する提言を行なってきましたが、全て賛同できなかったというとそういう訳でもなく、いくつか素直に勉強になった点があります。
まず第三章の中におさめられた『レフティーの台頭が代表を変える』という文章。正直、もくじでこの項を発見したときはあまり意味がわかりませんでした、というのも私の中ではサイドプレーヤーには利き足がすごく重要だとは認識していましたが、センタープレーヤーにも求められるとはあまり考えていなかったからです。しかし、その認識は改められることになりました。・・・といっても多少はオカルトじみてはいないか?と感じる箇所もありましたが、そうではなく一番説得力があったのは、石川直宏の『例えば中盤でボールを受けた選手がパスの展開をするとき、右利きの選手が右にパスを出そうとすると、一度体を開くからテンポが遅れるんです』という一言(P.130)。サッカー経験者にはよく伝わると思うのですが、右足でボールを持ちながら、自分より右にボールを出そうとするには以下の3パターン(1.体を少し右に開いて右のインサイドでボールを蹴る/2.左に少し流して左足でボールを蹴る/3.右のアウトサイドで蹴る)しかありません。このうち、1と2は、レフティが右に出すよりも1テンポ遅れますし、3では余程のボールコントロールが無いと正確にボールが蹴れません。そもそもアウトサイドキックは、シュートやロングパスなどではその独特の軌道(逆足で巻くカーブと似たような軌道)で飛び道具的に利用価値はありますが、強さと正確さ、そして迅速さが求められるショートパスではあまり有効な手段ではありません。レベルの高いサッカーとは、一瞬の隙を見逃さず、まるで射止めるようにその間隙を突くサッカーであり、ワンテンポの遅れというのは、たとえそれが1秒に満たない遅れだとしても、それだけ相手に対応する準備を与えるという点では往々にしてマイナスの働きしかありません。
そして、ザック・ジャパンでは右利きの選手が多く、レギュラーの中で左利きといえば本田圭佑、そして準レギュラーの李忠成や柏木陽介ぐらいしかいません。何よりも、遠藤-長谷部という代表の心臓ラインの両方ともが右利きです。このことが以前より指摘している、日本代表の攻撃の左サイド偏重という自体を招いている、とも考えられます(この本ではそこまでのことは書かれていませんが、しかしサイド攻撃にバランスが偏りが生じるといった趣旨のことまでは書かれています)。つまり、現状の日本代表は攻撃を左に集め、それにより相手も左に寄せておいて、そのまま左を突破できればよし、無理ならば逆サイドでフリーであろう内田や岡崎を使いましょう、といった戦略になっております。だからこそ、相手がサイドの攻防を捨て、中央、ペナルティエリア付近を固めることに終始した、3次予選ホームタジキスタン戦では、日本は相手を圧倒することが可能になったとも言えます。
ですから、日本代表の攻撃を封じようと思えば、左サイドの攻撃に対して『人数をかけずに』=『同じ人数だけで』防ぎきることができれば、一気に手詰まりになるかと思います。更に遠藤-長谷部を分断し、遠藤を孤立させることが出来ればより有効でしょう。
また、こういったレフティの話だけではなく、チリ代表を率いて南アフリカW杯で旋風を巻き起こしたマルセロ・ビエルサの手腕についても多くの解説がなされている他、スペインで最前線の戦術分析を行う人たちの日本代表の評価や、昨今話題の3-4-3の、ダイヤモンド型(バルセロナやナポリ)、ウィングバック型(日本)の違いなどもわかりやすく解説されている点は、かなり読み応えのある内容となっております。また、日本代表の選手評価は、前田遼一を高く評価していたり、その反面として川島永嗣のビルドアップ能力の低さなどを指摘している点では、私と近い考え方をなさっている場合も多いな、とも感じました。
最後に、この新書は『サッカー小僧新書』シリーズの第八巻として刊行されていまして、他にもおもしろそうなタイトルが沢山ございます。個人的には近日刊行予定である『なぜボランチはムダなパスを出すのか? ~1本のパスからサッカーの"3手先"が見えてくる~ 』が非常に興味深いと思っておりますので、また読了後、こちらに感想をアップできれば、と考えております。
2011年11月15日火曜日
【A代表】 "つまるところ、狙いは?" 北朝鮮 VS 日本
北朝鮮 1-0 日本代表
概要
既に3次予選突破を決めた日本代表は、平壌に乗り込み
北朝鮮と試合をするという歴史的な瞬間を迎える。
否が応でも政治的要素が入り込むこの1戦。
否が応でも政治的要素が入り込むこの1戦。
僅か150人のサポーターは北朝鮮の警察に囲まれ、
日本代表からすれば異様な雰囲気の金日成スタジアムで
日本代表は立ち上がりから厳しい戦いを強いられることとなる。
"偉大なる父・金日成"の膝下で行われるこの試合の行方はいかに。
2011年9月26日月曜日
【リーガ】 "挑戦を受けたバルサ3-4-3"
ヴァレンシア VS バルセロナ
2 - 2
概要:
ここまで例年稀に見る勢いで敵を撃破してきたバルセロナ。
ここまで例年稀に見る勢いで敵を撃破してきたバルセロナ。
その躍進の原動力となっているのが今シーズンからの新フォーメーションである。
しかし、バレンシアの若き指揮官とピッチ上の11人は、
目まぐるしいポジションチェンジで相手に的を絞らせないこの布陣の前に
混乱の中なすすべなくやられてきた他チームとは対照的に、
しかし、バレンシアの若き指揮官とピッチ上の11人は、
目まぐるしいポジションチェンジで相手に的を絞らせないこの布陣の前に
混乱の中なすすべなくやられてきた他チームとは対照的に、
ディフェンスの"穴"を効果的に突くカウンターサッカーでバルササッカーと堂々対峙。
最終的には、試合開始から続けてきたハイプレスが弱まる76分に同点弾を許したが、
それでもバレンシアの挑戦はバルサの絶対的地位を揺るがすことに成功したと言えよう。
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