2011年9月5日月曜日

【なでしこ】 日本 VS オーストラリア

なでしこジャパン (ロンドン五輪予選 vsオーストラリア) のフォーメーション



ゲームの詳細はこちらから。
以下は採点と感想など。




■コンディション調整が難しいなかで
初戦・タイ戦(9/1)
初戦のタイ戦、二戦目の韓国戦、そして今回とそれぞれ中一日(!)という超強行スケジュールに加えて、日本と比べるとグランドコンディションも悪い中国のグランドということもあってか、危険なパスミスを序盤から連発。のっけからかなり冷や冷やさせられます。特にFWの永里優季は、前半に相手GKとの1対1の状況で2本外してしまいます。私はこの時の彼女の表情を見てマズいな、と感じたのを覚えています。ちょうどW杯決勝でPKを外した時のような追い込まれた時の表情をしている(元からそういう顔なのかもしれませんが)。そう思って見ていると、悪い勘は当たるもので、徐々に積極性を失っていきます。持ち味である相手の背後で受ける動き試み自体は成功しますが、なぜかその後すぐにゴールに向かわず、ケアしにきたディフェンダーを躱そうとするなど、絶好機を二度逸したことによって「慎重すぎる」動きを見せるようになっていました。ディフェンダーも、跳ね返して、丁寧につないで、さあ点を獲ってくれ、っていう時にそんな消極的な動きじゃやってられないよな...などと考えていた(私はサッカーをはじめてすぐディフェンダーにされたので、今でもこういうところからサッカーを考えしまいます)ところ、前半もあと10分程度。私が佐々木監督その人であれば、正直なところ、今日は彼女の日ではなかった、としてさっさと交代だな・・・と考えていました。


■それでも"動じない"佐々木監督
フル出場の「意図」を読み取れるか
しかし、ハーフタイムを終えて後半のキックオフ時に現れたのは、前半とまるで変わらないメンバー。当然、私から見れば「もはやメンタル面に不調を来している」永里優季もそのまま出場しています。そして後半17分、鮫島のロングフィードを受けたその永里が相手を背負い、その隙に裏に抜け出した川澄奈穂美へとラストパスを供給。非常に冷静に流し込んで先制点をゲットするに至るわけです。相手を背負う動き、そして場合によっては交わすという動き...すなわちポストプレーですね、これを期待していたということでしょうか。「結果」ということに重点を置くならば、佐々木監督の選択は当たっていた・・・ということにもなります。そして、相手の戦術がパワープレー化を強めていく中で、タイ・韓国戦で先発フル出場した得点者川澄や、大野といった前線の選手は交代していきますが、そのいっぽうで結局は永里はフル出場します。アシストを除けば決して調子のよくなかった(ただし、シュートを除けば極端に悪いわけでもなかった)彼女を起用しつづけたのは、おそらく佐々木監督なりの何らかのメッセージがあるのだと思います。



■全ての試合を「完璧に勝つ」必要はない
後半17分の川澄のゴールでようやくスコアが動き始め、そしてそのままそれが決勝点となる・・・と聞くと非常に重たい試合のようなイメージを与えますが、内容的には圧倒していたように思います。オーストラリアに押し込まれるような場面も少なく、前述のような自陣でのパスミスからのピンチを除けば単調な縦ポン放り込みばかりで、対応に苦慮するような場面は少なかった。そういった意味でディフェンス陣は十分に役割を果たしたと言えるでしょう。ただ他方で、やはりそのミスが得点に繋がらなかったからこそ虎の子の1点を守り抜けた、とも言えます(韓国戦もミスからの失点で必要以上に苦しむことになりましたし)。コンディションの問題が大きいとはいえ、あれが格上のチームであれば間違い無く沈められていたでしょう。・・・とはいえ、今回の相手はFIFAランク9位の格下チームであることもまた事実です。相手に合わせた戦いをする必要もありませんが、かといってフルパフォーマンスを出せる状況ではないのもまた事実ですから、調子が悪いなりに結果だけはとにかく残せた、ということは評価されるべきだと思います。




■今後の課題:"ハイプレッシャーでのプレーの正確性"
実は「もっと楽に勝てた試合」だった!?
W杯の決勝。アメリカのハイプレスに自慢のボールポゼッションが上手く行かず、どうにか猛プレスを掻い潜るのに必死で、攻撃の組み立てどころじゃない・・・というあの光景。決勝でも、あれだけミスがあっても勝てたんだから、正直なところ、ミスが少なければ(あのアメリカでさえも)もっと圧倒できたでしょう。そして今回オーストラリア戦。アメリカほどのハイプレスも、組織的守備もありませんでしたが、それでも澤-阪口のホットラインの分断に腐心するオーストラリア相手に苦戦したのもまた事実。くわえて、結局のところ自分たちのミスで好機を逸しピンチを招来している。つまり、オーストラリア戦で発見された課題というのは、実はW杯で格上相手に戦っていた時に露見するようになった課題となんら変わらない課題だと言えるわけです。ですから、今後なでしこジャパンが「世界女王」として女子サッカー界に君臨するためには、W杯決勝の時のような根性サッカーだけではいけないでしょう。少なくともハイプレス下での相手の「いなし方」さえもっと上手くなってミスを減らすことができれば、もっと女王然りとした戦いが出来るはずです。


■提言:バルサ流4-3-3の導入
なでしこジャパンのサッカーをバルササッカーにたとえて賞賛を受けているころ、何故かお杉こと杉山茂樹氏がマジレスして話題になるという一件がありましたが、はたしてなでしこがバルサなのかどうかはさておき、確かに調子のいい時のなでしこサッカーの中盤のパスワークのテンポの良さはバルサのそれを彷彿とさせるものがあります。ただ、やはりなでしことバルサではそもそもフォーメーション・システムが違うこともあって、バルサの心臓部である「シャビ・イニエスタ・ブスケツ(・メッシ)」を分断する手間よりもなでしこの心臓部である「澤・阪口」を分断、もしくは押しこむほうが楽なのは確実です。そこで対案として私が提案したいのは、どんな相手に対しても圧倒的なポゼッションを誇るために、もうシステムからバルサのそれを導入すればいいんじゃないか、ということです。右の画像は一例にすぎませんし、もっと適材適所がありそうですが・・・。ただ、注目していただきたいのは川澄奈穂美のポジションです。おそらくはここの固定で間違いないと思います。バルサでいうとメッシが担うポジションで、ストライカーというよりは、ビルドアップに加わったり、相手を引きつけて両WGの飛び出しのスペースを確保したり、そしてドリブルで相手を切り裂いたりと、2010-11のバルサシステムの肝の一つとなっていたのがこのポジションで、1.両足で正確で強いパスが出せる 2.ドリブル能力が高い 3.視野が広い 4.ストライカーとしての「落ち着き」を持っている川澄はここが最適だと思います(もちろんメッシになれるとは思えませんが)。あと、なでしこが4-3-3向きだなーと思うのは、前線の選手に走力の高い選手が多いことです。川澄はもちろん、丸山や安藤といったドリブル能力の高い選手を多く抱える分、彼らを両サイドに張らせておくだけで随分と脅威になるのは間違いないと思うのですが、いかがでしょう?


■採点
海堀…6.0/危うげないパフォーマンス。
近賀…6.5/ディフェンスの安定感にくわえ、攻撃参加で存在感を示す。
岩清水6.0/相手のロングボールによく対応。
熊谷…6.0/期を見たオーバーラップで攻撃に厚みを加える。
鮫島…6.5/決勝点のセカンドアシスト。
阪口…5.5/いつもどおり存在感はあるが、パスミスの多さが目立った。
澤……6.5/屋台骨として活躍。
宮間…6.5/澤・阪口と共に組み立てを担う。豊富なアイデアを高い技術で裏付け。
川澄7.5/組み立てに得点にラストパスに前線プレスに一騎当千の活躍。
阪口…5.5/ミスに挫けない強さと積極性を。FWならばやはり得点で勝負。
大野…5.5/1対1の強さなどは目立つが、やはりゴールに向かう動きを。

安藤…6.0/前線からのディフェンスという泥臭い仕事をしっかり果たす。
丸山…6.0/出場機会の恵まれない中、与えられた仕事を腐らずにしっかり果たす。

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